連載講座

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スティーブ・ジョブスズ氏を偲んで

10月5日、世界中が大きな悲しみに覆われました。
Apple社のスティーブ・ジョブズ氏が死去したというニュースが流れたからです。
Macintoshをはじめ、iPod、iPhone、iPad、などの製品を世に送り出した
ジョブズ氏を偲び、その成果などをまとめたいと思います。

コンピュータで映像が流れる・・・第一の衝撃

1987年だったと思います。Macintoshを初めてみたのは。それまで私は
大型汎用コンピュータのソフト開発を中心に仕事をしていました。そして、
MS-DOSを使ったパソコンでのソフト開発がこれから必要になるだろう
と考えていた頃です。
コンピュータから音が聞こえ、写真や絵が写しだされ、映像が流れる、
とてもショックだったことを今でも鮮明に覚えています。

今では当たり前のことですが。
それまでのコンピュータは、数値や文字だけを扱っていました。ところが、
音・静止画・動画を扱えるコンピュータがあることに衝撃を受けたのです。
音や画像をデジタル化する技術については知っていましたが、簡単な操作で
身近なものとして目の前に存在していることが驚きでした。
また、マウスを使ってコンピュータを操作することも新鮮で、コンピュータに
慣れている私でも感動した覚えがあります。

こんな斬新なコンピュータを作ったのは誰だろう、これがジョブズ氏を知る
きっかけとなりました。その後、Macintoshが実現したマウスによるGUI
(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)は、他のコンピュータでも
利用されるようになり、今では普通になっています。

ところで、マウスによるGUIの開発はApple社のオリジナルではありません。
米ゼロックス社のパロアルト研究所での成果です。「未来のオフィス」を
創ることを目的に優秀なコンピュータ科学者を集めて、1970に研究を
開始したのがパロアルト研究所です。
この研究所から生まれた成果には、上記のGUI以外にも、コンピュータ同士の
通信技術であるLANの基盤となるイーサネット、レーザープリンター、
オブジェクト指向言語であるSmalltalk、ユビキタスコンピューティングなどが
あります。

ジョブズ氏は、
「ゼロックスは、今日のコンピュータ産業を丸ごと手に入れることができた。
会社の規模は、そう、十倍にもなっただろう。80年代のIBMや90年代の
マイクロソフトになることもできたのだ」と述べています。
そのくらい、素晴らしい技術を開発したパロアルト研究所ですが、ゼロックス社は
それを商用化することができませんでした。

1979年にパロアルト研究所を訪問したジョブズ氏は、GUIを搭載したパソコン
「アルト」を見て、Macintoshの開発を思い立ったと言われています。
ゼロックス社が商用化出来なかった技術を、ジョブズ氏がApple社でやり遂げたのです。
こうしてGUIという素晴らしい技術が世の中に登場し、現在では当たり前のように
使われるようになりました。

この世から忘れ去られる?

しかし、経営者としては失格だったようで、Macintoshを発売した1984年の
翌年にApple社の取締役を解任されます。そして、NEXT社を立ち上げ、
高性能コンピュータの開発を行います。私がMacintoshに出会ったときは、
既にApple社を去った後だったわけです。
NEXT社のコンピュータは、業界では大きな期待を持たれていました。
ジョブズ氏が作るコンピュータだから、きっとすごいものに違いないという理由です。
確かに、出来上がったコンピュータは素晴らしいものだったようです
(私は実際に見ていないので)。しかし、時代を先取りしすぎていたようで、
ここでも経営に行き詰まりNEXT社は1993年にソフト会社として細々と
存続することになります。
一方、ライバルのマイクロソフト社は、そのシェアを着実に伸ばし1995年の
Windows95の発表へと上り詰めていきます。こうした状況からジョブズ氏は
もうダメだという論調の記事が雑誌などに載ることもありました。

Apple社は、MacintoshⅡなどの後継機を出してはいたものの、ぱっとする製品を
出せずにマイクロソフト社とのシェア争いで後塵を拝する状況が続いていました。
ところが、1997年次期OSの開発が暗礁に乗り上げていたApple社がNEXT社の
OSを次期OSに採用することを発表しました。ジョブズ氏のApple社への復帰が
決まった瞬間です。
この後、ジョブズ氏はApple社のCEOとして君臨し、iMacを発表することに
なります。斬新なデザインのiMacはMacintoshファンを大いに喜ばせると同時に、
MacintoshとApple社を世の中に大いに認知させることに成功しました。

手のひらサイズのコンピュータ・・・第二の衝撃

2008年12月、私は東京都内でソフトバンクの子会社に勤める友人と食事を
していました。その友人が、おもむろにiPhoneをカバンから取り出しました。
その年の夏に発売されたiPhoneを初めて見た私は、お酒を飲みながら1時間あまり
iPhoneを遊び続けました。そうMacintoshを初めて見たときのような衝撃を
覚えながら。

これは、携帯電話ではない、手のひらサイズのコンピュータだ。これまで様々な
携帯型情報端末を見比べてみましたが、どれも「帯に短し襷に長し」のもの
でしたが、これは全てを解決してくれる、と直感しました。
また、Macintoshのときと同様に、新しい時代の流れを感じたときでした。
指で画面を操作しながら、自然な形で次から次へと情報を探し出せる感覚は
新鮮であり、新しいユーザーインターフェースを実感した時でした。
と同時に、ネットワークにつながるユビキタス(いつでもどこでも)デバイス
としての可能性を大いに感じた瞬間でもありました。


ジョブズ氏が創りだしたコンピュータを振り返ると、そこには常に
「人間に優しいコンピュータ」という想いが流れているように思います。
それが、優れたユーザーインターフェースを生みだす原動力であり、
そして、斬新なデザインを生みだす源だったのではないかと思っています。

ジョブズ氏が若い時は、時代をあまりにも先取りしすぎていたため技術が
追いつかず、事業としては失敗したこともありましたが、晩年は時代に
マッチした素晴らしい製品を生みだし、時代をリードする役割を果たしました。
IT革命の前半期を創りだしリードした人材の一人であることは間違いありません。
そして、まさに幕が開いたばかりのIT革命の後半期を象徴するような製品を
置き土産にしてくれました。iPhoneやiPadは、クラウド時代の幕開けを
象徴する製品です。

新しいIT時代の幕開けのファンファーレだけを吹いて、この世を去った
スティーブ・ジョブズ氏のご冥福を祈りたいと思います。

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