連載講座

tochikawa-masafumi

ITが問題なのか、組織力が問題なのか?

「今の機能では使い勝手が悪いので、システムを修正してほしい」
お客様と打ち合わせをしていると、こうした言葉が時々出てきます。
特に、システムを導入した直後にはよくあります。

しかし、その理由をしっかりと聞いてみると・・・

今回は、システム(IT)が問題なのか、使う組織が問題なのか、についてです。

情報システムは業務ルールを具現化したもの

業務系の情報システムは、業務のやり方やルールを整理して具現化したものです。業務の効率化や自動化を目的としていますので、業務ルールや手順を明確にして、それを情報システムに埋め込むことになります。
そのため、情報システムの機能を修正するということは、業務ルールや手順を変更することと同じ意味になります。操作性を良くするという程度の改良は別にして、情報システムの機能を変更することは、大きな意味を持っています。

ところが、お客様のところで打ち合わせをしていると、機能を変更したいという要望がよく出てきます。業務を変更しなければならないような環境変化が起きているとは考えにくい状況においてです。
その理由を注意深く確認すると、「これまでやっていたやり方のほうがいいから」というものがほとんどです。

情報システムは経営課題を解決するための手段

情報システムを導入する目的は、何らかの経営課題を解決するためです。そして、その課題を解決するために、業務のやり方も変更することがあります。

例えば、「不動在庫を生まないようにして在庫を削減する」という経営課題があった場合、「過剰在庫を防止するため、市場の需要変化に合わせて小ロットで生産をする」という解決策を考えたとします。そうすると、小ロット生産に対応した生産指図をしなければならず、指図の数量が増えることになります。そこで、生産指図を発行する業務のやり方を変更しなければ、増加した業務量に対応できなくなります。

ところが、現場にこうした業務変更の意味などが浸透していないと、新しくなった情報システムが使いにくいという不満だけが出てくることになり、情報システムの機能を変更してほしいという要望になります。

当初決めたルール通りに業務を行わずに、使い勝手が悪いから機能を変更すると言うのは、本末転倒です。ただし、ルールに問題があるのならルールを直すことは必要です。課題解決の目的から逸脱しない範囲で、ルールを見直すことは大切です。しかし、多くの場合は、そうした議論もせずに、「情報システムが悪い」という結論になります。
更に悪いことは、情報システム担当の部長などにそうした情報が伝わる前に、社長などに情報が伝わることで、「情報システム担当は何をやってるんだ」となることです。
話が感情的になることで、解決できることもできなくなることになり、無駄なお金を費やして情報システムを改悪し、結果、経営課題の解決ができなくなる、というシナリオが待っています。

正しいことを正しく行い続ける

こうした状況を防ぐためには、経営課題を解決するために「正しいことを行う」ルールを決める必要があります。
ここでいう「正しいこと」とは、お客様に喜ばれることや社会から認められることを基本とした考え方です。
そして、ルール通りに「正しく行い続ける」ことを徹底する必要があります。
そのうえで、結果を評価し、期待の効果が出ているかを判断する必要があります。
上記の例だと、「正しく行い続ける」ことをしていないのに、ルールを変更しようとしていることになります。

こうしたことができない組織に情報システムを導入しても、十分な効果を発揮することができません。情報システムの導入効果を高めるためには、組織能力を高めることが重要です。組織能力は、会社の規模の大小には関係ありません。

組織能力を高める

前回は、情報システムの導入効果を高めるためには、組織能力を高めることが重要であるという話をしました。

組織能力とは、「すべてはお客様のために」という顧客志向の考え方を基礎にして、お客様に価値を提供する独自能力と価値を作り出す仕組み(価値提供プロセス)を構築することと、それを継続的に改善・革新する能力のことです。
そして、そのためにはひとりの英雄よりも、社員全員が心を一つにしてお客様に接することが必要であり、価値提供プロセスをしっかりと運用することが大切です。
更に、組織能力を高めるためには、優れたリーダーシップも必要になります。経営者が「こうして社会に価値を提供する」「そのために、こういう会社になる」という明確なミッションやビジョンを持ち、それを社内にしっかりと浸透させる必要があるからです。

組織能力とIT導入

組織能力のレベルを知るために、次のような評価尺度を使って評価することができます。
●レベル1--未統制の組織
混沌とした、いきあたりばったりで、一部の英雄的なメンバー依存の状態
●レベル2--統制された組織
業務プロセスの規則が存在し、反復して業務プロセスを実行できる状態
●レベル3--標準的で一貫した組織
業務プロセスが標準として明示的に定義され、関係者の承認を受けている状態
再発防止がきっちりとできる状態
●レベル4--予測可能とする組織
業務プロセス管理が実施され、さまざまな仕事を定量的に計測している状態
未然予防がある程度できる状態
●レベル5--継続的に改善する組織
継続的に自らの業務プロセスを最適化し改善している状態

レベル1の状態の組織にITを導入しても、まず成果は出ません。少なくともレベル2程度の組織能力を持ってからIT導入を検討する必要があります。
また、業務ルールや業務フローを全社的に整理し、それに応じたITを導入することで、レベル2からレベル3へ進化することができると思います。
更に、ITに蓄積されたデータ(=事実)をもとに、ミスなどが起きた場合に再発を防ぐ議論が社内で定着すると、レベル3の状態になることができます。
そして、各業務の活動状況を定量的に把握(いわゆる見える化、ITが有効に活用できます)することで、異常を未然に発見(アラームを鳴らす)し、重大な問題が起きないような組織になるとレベル4ということになります。

まとめ

このように、ITを活用しながら組織能力を向上させることは重要です。私は、これが「IT経営」の本質であると考えています。
組織能力が向上すると、顧客満足が高まり売上の向上につながります。また、社内での様々なムダやムラが無くなり、利益の向上にもつながります。

経営課題を解決し組織を成長させることがIT導入の目的であり、ITは目的達成の手段である、という認識をしっかりと持って、目的実現に向けて全社一丸となって取り組むことで、その効果が現れます。そうして初めて、ITの投資効果も把握できることになります。
ITを導入することが目的にならないように、常に意識しながら目的を達成するようにしましょう。

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